2023.5.4

第3回 数理モデルデザイン研究会 (Society for Math for Design)

科学分野で説明対象の仕組み(デザイン、メカニズム)を明らかにすることは、観察データから具体的な数理モデルを同定することと関係が深い。また、社会の仕組みや、人々の行動の分析の背後には、暗黙のもしくは明示的な「数理モデル」の仮定が想定され、このようなモデルに基づきデザインがなされている。つまり、「数理モデル」は、現代のデザインにおいて重要な因子である。そこで、「数理モデル」を様々な角度から理解する「数理モデルデザイン研究会」を立ち上げます。

第3回では「Making Nonsense」と題して、牧野豊先生にご登壇いただきます。

これまでの作品から、今なぜ機械学習を用いた作品を作るのか、また現在進行中の幻視・幻聴の研究・制作についてお話していただきます。牧野豊先生のサイトはこちらです。 


芸術と数理の融合がどのような形で行われているのか大変興味深いところです。是非ご参加ください。

日時

2023年5月29日(月) 18:20~19:30

場所

シアタールーム(7号館1階)
(対面またはオンラインで参加可能。演者は会場で参加します。)

プログラム

1.牧野豊「Making Nonsense」

2.質疑応答および議論

進行:丸山修

主催:デザイン基礎学研究センター、未来構想デザインコース

レビュー

当研究会の趣旨は、数理モデルのデザインを中心に位置づけ、「デザインのための数理モデル」と「現象理解のための数理モデルのデザイン」という座標軸を意識しつつ、研究と教育の視点から幅広く議論するサロン的な場を作ることにあります。

2023年5月29日月曜日に第3回の数理モデルデザイン研究会を次のプログラムで開催しましたのでここに報告します。

日時:5月29日月曜日 18:20~19:50
場所:シアタールーム(7号館1階)
参加者:対面9名、オンライン約4名

今回は、牧野豊先生に「Making Nonsense」という題で「これまでの作品から、今なぜ機械学習を用いた作品を作るのか、また現在進行中の幻視・幻聴の研究・制作についてお話しさせていただきます」ということで講演していただきました。

最初に先生の次を含む作品を紹介していただき聴衆はそれらを鑑賞するという形で進みました。

  • The Conditions of the Process, 2011
  • Conflux, 2010
  • Void, 2013
  • Displacement, 2018
  • Foldings, 2018
  • Technical Ensemble, 2021

(詳しくは、牧野先生のサイトをご覧ください)

その後、牧野先生がどのような思想やロジックで芸術活動しているかという話をして頂きました。”Reconfiguring of own body”から”Experience”への関係性に”active perturbation”という物理的なコンセプトを加味してロジックを構築中であるなどの深い話をして頂きました。また、どこで機械学習やAIなどの数理的ファクターを取り入れてあるかという質問に対して、作成プロセスのすべての段階で使っているとのことでした。

余談ですが、期せずして芸術作品の鑑賞者としては極上の時間を過ごさせてもらいました。といいますのは、今回の会は、作品を作成者本人に解説して頂き、さらに、その作品の根底に流れる作者の思想やロジックを紹介して頂き、さらに作成者本人に質問し議論するという、鑑賞者としてはこれ以上の鑑賞方法は無い鑑賞の機会だったように思います。芸術を楽しむ者としては、「いやぁ、芸術って本当にいいもんですね」(ちょっと古い言い方!)といいたくなる会でした。

最後に、当研究会は3回目を迎えることが出来ました。1回で点になり、2回で線になり、3回で面になります。今回でようやく、研究会の性格を表す面を形成できたように思います。これまで講演して頂いた、尾方義人先生、澤井賢一先生、牧野豊先生、そして議論に参加していただいた先生方に感謝します。


次回は4回目となり、三角錐の立体空間となります。当研究会の趣旨どおり、数理モデルとデザインが入り混じったサロン的「空間」を作っていたいと考えております。今後もよろしくお願いします。