2023.6.21

第4回 数理モデルデザイン研究会 (Society for Math for Design)

科学分野で説明対象の仕組み(デザイン、メカニズム)を明らかにすることは、観察データから具体的な数理モデルを同定することと関係が深い。また、社会の仕組みや、人々の行動の分析の背後には、暗黙のもしくは明示的な「数理モデル」の仮定が想定され、このようなモデルに基づきデザインがなされている。つまり、「数理モデル」は、現代のデザインにおいて重要な因子である。そこで、「数理モデル」を様々な角度から理解する「数理モデルデザイン研究会」を立ち上げます。

今回は、脳研究において機械学習的アプローチを試みられている元村祐貴先生に研究紹介をお願いしてます。

講演者 元村 祐貴 先生

「脳情報デコーディング」

近年、脳研究の分野においても機械学習を用いた手法が発展してきている。特定の状態にある時の脳波やfMRI信号、その他生体情報がどうなっているのかを計測する従来の手法とは逆に、機械学習によって脳・生体情報のみからヒトの状態を推定するデコーディング手法が用いられ、見ている画像から夢の内容の推定まで、幅広い研究が進められている。本講演では、近年のデコーディング研究を概説し、脳研究におけるデータサイエンスの今後の展開について考える。

是非ご参加ください。

日時

2023年7月3日(月)18:30~19:30

場所

シアタールーム(7号館1階)
(対面またはオンラインで参加可能。演者は会場で参加します。)

プログラム

1.元村祐貴 「脳情報デコーディング」

2.質疑応答および議論

進行:丸山修

主催:デザイン基礎学研究センター、未来構想デザインコース

レビュー

第4回数理モデルデザイン研究会の報告です。

日時:7月3日月曜日 18:30~19:44
場所:シアタールーム(7号館1階)
参加者:対面9名、オンライン10名

今回は、元村祐貴先生に「脳情報デコーディング」というタイトルで話して頂きました。脳の測定データからそれが意味するところを解き明かす(decodeする)という魅力的な研究トピックです。

まず、脳の活動データとして、
非侵襲的手法によるデータ(脳波、NIRS, 脳磁図、機能的(functional)MRI)と
侵襲的手法によるデータ(頭蓋内電極など)を説明されました。

そして京大ATR脳情報研究所の神谷先生と阪大生命機能研究科の西本先生の脳情報デコーディング研究を紹介されました:

見ている画像の脳内再構成
画像のGAN(Generative Adversarial Network, 敵対的生成ネットワーク)による再構成
感情のdecoding
錯視のdecoding
聴いた音声に対する脳波からの再構成

動画のdecoding(動きの再構成)
CMを見せて印象のdecoding
brain machine (computer) interface (BMI/BCI)の話
イーロン・マスクのNeurolink project
頭にチップを埋め込んで文章を書き出す話
脳波から画像を生成するDreamDiffusion、など。

最後に、元村先生は、非侵襲的に得られる脳波を使ってどこまでdecoding出来るかという
形で研究を進めているということでした。Boruta というrandom forestの変数重要度に基づいた変数選択手法などを用いた手法や、視覚・聴覚の情報を同時に与えた時、どちらに注意を払っているかを予測するなどの興味深い研究事例を紹介して頂きました。