第7回 数理モデルデザイン研究会 (Society for Math for Design)
科学分野で説明対象の仕組み(デザイン、メカニズム)を明らかにすることは、観察データから具体的な数理モデルを同定することと関係が深い。また、社会の仕組みや、人々の行動の分析の背後には、暗黙のもしくは明示的な「数理モデル」の仮定が想定され、このようなモデルに基づきデザインがなされている。つまり、「数理モデル」は、現代のデザインにおいて重要な因子である。そこで、「数理モデル」を様々な角度から理解する「数理モデルデザイン研究会」を立ち上げます。
- 講演者 竹市 博臣先生(理化学研究所 情報統合本部 先端データサイエンスプロジェクト)
「開放系リアリティグラウンディング研究の紹介」
知性の本質と起源を解明する鍵のひとつが「身体性」であり、芸術や数学の抽象概念の操作も身体を通した物理的な対象の操作から発展したものと位置付けられる。光を含む電磁気、音を含む振動、自己運動と関係する力の作用が体制化され、感覚入力をもとに、時空間内の不連続な境界つまり表面の配置や運動、表面の性質としての反射や屈折、力学的な加速度や応答特性の把握も可能になる。たとえば肌触りをみる場合は、手を動かして、皮膚の感覚器で検出された力から筋運動で加えた力を差し引くことで対象物の力学的な応答特性(=肌触り)を得る。物理量の推定に必要なものは境界条件と制約条件であるが、制約条件は感覚入力が非ガウス的つまりでたらめでなければ定まるので、感覚入力が予測可能であることに対応し、制約条件があればそれを満たす解の生成も可能となる。私たちは制約条件を満たす世界にリアリティを感じるが、その情報学的な意味を論じたい。
日時
2024年8月28日(水) 16:40~18:10
場所
九州大学大橋キャンパス7号館1階シアタールーム
(対面またはオンラインで参加可能。演者は会場で参加します。)
*変更:台風10号の接近につき、完全オンライン開催に変更いたします。
*オンラインで参加の方はこちらから登録をお願いします:
主催
デザイン基礎学研究センター、未来構想デザインコース
レビュー
日時:2024年8月28日(水)午後4時40分ー6時10分
場所:オンライン
参加者:21名
今回は、理化学研究所情報統合本部先端データサイエンスプロジェクトの竹市博臣先生に講演して頂きました。最初に大学時代から理研への就職の話があり、本論ではアモーダル(Amodal)補完に関する様々な問いや研究事例を紹介して頂きました。アモダール補完とは、対象物の一部が隠れて見えない場合に、脳内で欠けた部分を補完して全体像を認識する視覚機能です。例示されたものは、ナイフで腕を切っている少年や、浮いて見えるペン、指先の半球などの図でした。また、ご自分の研究の中から、「曲線をアモーダル補完する際は、変曲点が最小になる曲線が選ばれることを実験で示せた(https://doi.org/10.1068/p240373)」ことと、「文字列の一部を遮蔽したものをVRゴーグル上で提示して、遮蔽部分に物体があるという触覚刺激を与えるかどうかで補完能力に差があるかを調べた(がうまく差は出なかった)」という内容も紹介して頂きました。
講演の後の質問時間では、統計科学、哲学、情報科学、心理・医学といった多様な分野の研究者からの質問があり、非常に学際的な研究会となりました。