第8回 数理モデルデザイン研究会 (Society for Math for Design)
科学分野で説明対象の仕組み(デザイン、メカニズム)を明らかにすることは、観察データから具体的な数理モデルを同定することと関係が深い。また、社会の仕組みや、人々の行動の分析の背後には、暗黙のもしくは明示的な「数理モデル」の仮定が想定され、このようなモデルに基づきデザインがなされている。つまり、「数理モデル」は、現代のデザインにおいて重要な因子である。そこで、「数理モデル」を様々な角度から理解する「数理モデルデザイン研究会」を立ち上げます。
「一代雑種品種の受粉制御技術〜ホウレンソウを例に〜」
- 講演者 小野寺康之先生
(北海道大学 大学院農学研究院 基盤研究部門 応用生命科学分野 遺伝子制御学研究室)
遺伝的に異なる2つの親系統を交雑させて作出した一代雑種(F1ハイブリッド)は、両親よりも旺盛に生育し、雑種強勢を示す。現在、トウモロコシなどの穀物や、キャベツ・ホウレンソウといった野菜の生産において、一代雑種(F1ハイブリッド)品種が広く利用されている。特にトウモロコシでは、1940年代から一代雑種品種の本格導入により単位面積あたりの収量が飛躍的に向上したことが知られている。
一代雑種品種を作出するには、自家受粉や系統内交配を抑え、親系統間の交配のみが成立するように受粉を制御する必要がある。一方で、一代雑種品種の親系統を維持するには、逆に自家受粉(またはそれに代わる交配)のみが成立するよう制御しなければならない。したがって、一代雑種品種を安定的に生産するには、状況に応じた受粉制御技術が不可欠である。
作物の種類によって、さまざまな受粉制御法が用いられている。ホウレンソウは基本的に雌株と雄株が分かれる雌雄異株の植物である。かつては、一代雑種品種の生産において、種子親と花粉親のいずれにも雌雄異株の系統を用いていた。そのため、受粉の前に種子親系統から雄株を取り除く(除雄する)ことで、系統内交配を防いでいた。現在では、除雄作業の負担を減らすため、間性(雌雄同株)系統を利用した受粉制御法が用いられている。
本講演では、ホウレンソウにおける受粉制御技術と、その技術的基盤となる遺伝的な性決定機構について紹介する。
日時
2025年2月28日(金) 16:40~18:10
場所
オンライン(ZOOM)
*参加ご希望の方はこちらから登録をお願いします:
主催
九州大学芸術工学研究院 デザイン基礎学研究センター
九州大学芸術工学部 芸術工学科未来構想デザインコース
レビュー
日時:2025年2月28日(金)午後4時40分ー6時05分
場所:オンライン
参加者:15名
今回は、北海道大学大学院農学研究院基盤研究部門応用生命科学分野遺伝子制御学研究室の小野寺康之先生に「一代雑種品種の受粉制御技術〜ホウレンソウを例に〜」というタイトルで講演して頂きました。最初の3分の2くらいを分野外の人でも分かるように、F1品種の導入と普及、遺伝的均質な系統の作成、商業的価値<F1品種の生産方法や経済的な採取方法、種子生産の課題等のトピックについて語って頂きました。その後、ホウレンソウの性決定に関する遺伝子研究について説明して頂き、遺伝子ネットワークの複雑性や環境要因が性に与える影響についても議論して頂きました。
その後の質問では、性決定に関する質問が多かったです。ヒトにはないメカニズムである自家受粉や、ホウレンソウの性の表現形は雄雌のように2値の離散的なものでなく連続的なものであることなど、性の不思議を知ることができました。